2013年6月8日土曜日

読書感想文 オタクの息子に悩んでます

レコーディングダイエットで知られる岡田斗司夫の本。
新聞紙上で行っていた人生相談のやりとりと,
その回答を書き上げるまでに著者がどんなことを考え,
工夫したのかというプロセスの部分が主な内容です。

タイトルでかなり損をしているような気がしますが,
面白かったです。
法律相談と人生相談はもちろん同じものではありませんが,
共通する部分も多分にあるでしょうし,参考になりました。

「共感」について触れている部分をご紹介。

「共感のコツは『相談者と同じ温度の風呂に入る』ことにあります。
恋愛で悩んでいるとか、借金のことで困っているとか、
いろんな悩みがありますよね。
その時に、
ついつい僕たちはその相談者と同じ温度の風呂に入らないんです。
その人が熱くて困ってるとか、冷たくて困ってると言っても、
自分は服着て標準の温度で快適に過ごしながら、
つまり安全地帯から『こういうふうにすればいいよ』と
忠告してしまう。
とくに男性はこれをやってしまいがちです。
というのも、男性はすぐに回答を出そうとする。
僕と同じで、役に立とうとするあまり、
その人に対していま自分が言える一番論理的で、行動可能で、
こういうふうにすれば状況が改善されるのにといった指針を、
手早く言おうとしすぎるんです。
結論だけじゃダメなんです。
それよりもっと前の段階で、
『相手と同じ温度の風呂に入る』。
これが必要です。」


こういうの,相談における基本といえば基本なんでしょうけど,改めて気を付けないとと思いました。


寄せられる人生相談への,
著者の回答のあり方の変化が書かれているのも興味深かったです。
当初は著者は,人生相談で持ち込まれる悩みに対して,
コンピュータのように論理的に理性的に分析して,
余計な部分を仕分けして,解決可能な問題についての解決策を
提案するというような方向性でした。

しかし著者はある時,
自らの回答に対して違和感を持って考え込みます。

「俺の回答には愛がねえな」

著者は,痛快さや過激な切り口を売りにするのではなく,
あくまで「役に立つ回答」を目指しています。
ところが,回答の際に「上から目線」だけだと,
結局相手に言葉が届かず,役に立たないと感じ始めます。

では,どうするか。
論理的に考えをひねり出す限り,
上から目線になる事自体は絶対的な宿命として避けようがない。
そこで,緩和剤としての「愛」が必要なんだという結論に
たどり着きます。

「もう一歩、もう半歩だけ、相手の事情に踏み込む勇気。
もう少しだけ、傷つかない言葉を選ぶ配慮。」

「そのほんの少しのさじ加減が『頭の良いだけの回答』と
違うスパイスになる。」